「はじめに」より
インド中央部にある寒村カジュラーホに遺るヒンドゥー教寺院は壮観だった。外壁の神々や天女立像、ミトゥナ(「男女一組」の意)の立像などは洗練されていて美しかった。 カジュラーホは村に散在する寺院も豪華で素晴らしいが、当時は村人も少なく、観光客もほとんど訪れない、のどかで心休まる場所でもあった。 カジュラーホは私にとって心の故郷のようなところである。カジュラーホに行くと、ただいま ! という気持になる。何度行ってもまた行きたくなる、そんな場所でもある。 一般にはあまり知られていないカジュラーホとカジュラーホのヒンドゥー教寺院のことを、本書を介して、少しでも知って頂くことを願っている。
石黒 淳(いしぐろ あつし)
1945年 愛知県名古屋市に生まれる。
1969年 名古屋大学文学部(美学美術史)卒業。
1970~1971年 インド政府奨学生としてカシミール大学に留学。
1976年 名古屋大学大学院博士課程中退。同年~1985年 同大学文学部助手。
1985~1990年 名古屋造形短期大学助教授。
1990~2016年 愛知学院大学文学部教授。
1993~1994年 同大学在外研究員としてハーバード大学にてP.チャンドラ教授のもとでインド美術史を研究。