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地域文化活動

台湾文学セレクション

沈黙の島

蘇偉貞 著 倉本知明 訳

四六判/フランス装
348頁
ISBN:9784863331020
価格 2,530円(本体2,300円)
発行日:2016/03/15

あなたはまだこの人生を続けたい?

香港の離島に暮らしながら、アジア各地でビジネスの実績をつむ晨勉(チェンミェン)。
自立していて孤独な雰囲気をもっているから島が好きだという彼女は、30歳の誕生日に離島にもどる船でダニーと知りあう。台北には鏡像さながらのもうひとりの晨勉がいて、同じころ華僑男性の祖と出会っていた。ふたりの晨勉が生きていることで、はじめてその人生は空白なく満たされていくのだ。
香港・台北・シンガポール、そしてバリ島と、魂の故郷をもとめて流転したのちに、晨勉の選択する生き方とは。
国家や民族、階級やジェンダーといったあらゆるアイデンティティを脱ぎ去り、個/孤としての女性の性と身体を見つめた、台湾現代文学作家・蘇偉貞の代表作。
第一回時報文学百万小説特別審査員賞受賞。

蘇偉貞(そ いてい)Su Wei-chen
1954年台湾台南生まれ。外省人二世の女性作家。中華民国政治作戦学校演劇科卒業後、国防部芸術工作総隊などで軍職を歴任、退役したのち編集の仕事に就きながら、旺盛な執筆活動を展開していく。女性の性と身体を独特の美意識で描きだし、ジェンダーやエスニシティ研究などに影響を与えるとともに、自らが育った眷村をテーマにした作品も数多い。作家張愛玲の研究者としても知られ、台湾の国立成功大学で教鞭を執るなど、創作と研究を両輪に活躍する。

倉本知明(くらもと ともあき)
台湾・文藻外語大学助理教授。専門は比較文学。台湾高雄在住。

「訳者あとがき」より

国家や民族、階級やジェンダーといったあらゆる自己認識を剥ぎ取った、一個の島嶼として自らの身体を見つめた『沈黙の島』は、アイデンティティをめぐる政治的な駆け引きが火花を散らしていた1990年代中葉の台湾において発表されたのであった。社会の至るところで「私」とは何者であるかといった議論が喧しく議論されていた当時、何者でもない「私」を主張する手段としておのれの身体を沈黙する一個の島嶼として描いたことに、このテクストのもつ政治的意義がある。