文学・エッセイ

台湾文学セレクション5

霊界通信

陳又津 著 明田川聡士 訳

四六判/フランス装 344頁  ISBN978-4-86333-198–3 C0097
本体価格2,300円(税込2,530円) 2023年10月25日発行

人類史上最大の高齢者時代がやってきた!
暴走老人+家出美少女+クラウド・ベイビー+台湾一周青年
=インターネットコミュニティ「霊界通信」

国民党退役軍人の老陳ラオチェンは、病院で知り合った老姜ラオジアンと義兄弟の契りを交わし、旅に出ることにした。
大学生の江子午ジアンズーウーは自分探しのため、ヒッチハイクで台湾一周を目指している。台東で雨宿りするなか、二人の老人と出会う。
トランスジェンダーの莉莉リリーは15歳、女子校で美少女体験中。突然死した六爺リウイエからのメッセージを受信し、お葬式を出すことに。
バス旅行で父を亡くした梅宝心メイバオシンは、海上で散骨中に死んだはずの父からの友達リクエストを受け取る。

それぞれ異なる性、年齢、人生を歩む「わたし」を語り手とする四章の物語は、医療・介護の問題などに題材を広げながら、ときに皮肉、風刺、ブラックユーモアを交えて描き出される。

陳又津(ちん ようしん)Eugene Yuchin Chen
1986年、台湾・台北近郊の三重生まれ。作家、エッセイスト。国立台湾大学戯劇系卒業、同修士課程修了。
著作に『跨界通訊』(本書、印刻出版、2018)、『少女忽必烈』、『我有結婚病』、『我媽的宝就是我』、『新手作家求生指南』、『準台北人』など。受賞歴に時報文学賞(2014)、香港青年文学賞(2013)、新北市文学賞(2011)など。

明田川聡士(あけたがわ さとし)
1981年、千葉県生まれ。獨協大学国際教養学部准教授。早稲田大学第一文学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専攻は台湾文学・台湾映画、現代中国語圏の文学と映画。

台湾文学セレクション
重層的な共同体の記憶のなかに多様なアイデンティティを受容する台湾から、世界にひらかれた現代文学作品を紹介するシリーズ。
編集委員:黄英哲・西村正男・星名宏修・松浦恆雄

目次

再生──日本の読者へ  陳又津

春の章 死に急ぐ老人──陳秋生の二カ月前

夏の章 クラウドで逢いましょう──江子午の今

秋の章 美少女体験──莉莉の十年前

冬の章 霊界通信──梅宝心の一年後

「新二代」作家が描く少子高齢社会のいま  明田川聡士

時の太鼓

時の太鼓

立川武蔵 著

A5判/並製 89頁 ISBN978-4-86333-180-8 C0092
本体価格1,000円(税込1,100円) 2022年2月6日発行

「はじめに」より

やがてわたしはその「恐ろしきもの」は時(時間)と関係していると思うようになった。時がなければわれわれの命もない。死とは時に「焼かれてしまう」ことを意味する。時は命を燃やす火であるが、一方では命を焼く火でもあるのだ。時の太鼓を聞きながら、八十年が過ぎた。

立川武蔵(たちかわ むさし)
1942年名古屋に生まれる。
名古屋大学教授、国立民族学博物館教授、愛知学院大学教授を経て、現在、国立民族学博物館名誉教授。

日中韓文人交流と相互理解

日中韓文人交流と相互理解 明治大正期の詩詞を通して

萩原正樹 編

A5判/上製カバー装 288頁  ISBN978–4–86333–169–3 C3090
本体価格 8,000円(税込8,800円) 2020年11月30日発行

 日中韓の知識人は、東アジア漢字文化圏における共通言語ともいえる中国古典語を自在に用いることによって、それぞれの口頭言語を知らなくてもコミュニケーションを取ることができた。その中国古典語による言語藝術である詩や詞も早くに日韓両国に伝わり、社交の道具としても用いられ、特に明治維新以降は文人交流において互いに理解を進める役割を持っていた。詩詞を通した交流は相互理解にどのような影響を与えたのか。本書には、明治期における日台文人交流や、内藤湖南、森槐南、長尾雨山、久保天隨ら明治・大正期を代表する優れた漢学者・漢詩人の文学と交流、また金允植と日本人との詩文唱和についてなど、さまざまな問題が従来には無い視点から描き出されている。

編者
萩原正樹(立命館大学文学部教授)

目次

明治時期臺灣「玉山吟社」臺、日文人漢詩交游及相關詩評探析: 以『臺灣新報』、『臺灣日日新報』爲核心
  周志煌(国立政治大学中文系教授)

小泉盜泉と詞  萩原正樹(立命館大学文学部教授)

路歧的回望:内藤湖南漢詩中的淸人與遊淸  汪超(武漢大学文学院副教授)

晚淸民國報刊中的森槐南與文人交流研究  詹千慧(国立彰化師範大学国文系専案助理教授)

金允植(號:雲養)と日本人官僚・文人學者の詩文唱和について
 ―『雲養集』所收『東槎謾吟』と『芝城山館納涼唱和集・輕妙唱和集』を中心に
  魯耀翰(高麗大学校漢字漢文研究所研究教授)

長尾雨山與近代中國文人之詩歌交流―以鄭孝胥、上海結社爲中心  賴信宏(東呉大学中文系助理教授)

鷹取岳陽年譜補訂稿  萩原正樹(立命館大学文学部教授)

論大正詩人久保天隨與淸詩的受容關係  佘筠珺(国立台湾大学中文系助理教授)

後記

楽盗人

(がく)(ぬす)(びと)──さとうますみ詩集

さとうますみ 著

A5判/並製カバー装 114頁 ISBN978-4-86333-146-4 C0092
本体価格 1,500円(税込1,650円) 2019年7月30日発行

さとうますみ第三詩集。
 平易でどこかなつかしい言葉でつむがれる「失ってしまったかもしれない世界」の断片。記憶のように幻想のようにたちあがるふるさとのおもかげ。南国の海辺の町に生まれた作者の感性が、ふるさとを呼ぶ時、それは海面を光らせて豊かに匂いたつ。

ふるさとの海に紺碧の潮が出入りする洞窟があった/引き潮はしゅわしゅわと鳴り/満ち潮はたぷたぷと岩を打った/洞窟は大きな楽器のようによくひびいた/くりかえしくりかえすわたしの時間も/空洞の中で歌のように響いているだろう(「空洞になる」)

 表題作は奈良時代の秘曲の楽譜から着想を得たもの。

この曲を盗みたかったのはわたしだったかもしれない/わたしは/言葉のすき間にしのびこむ美しい光でありたかったから/月を磨くように泣きたかったから(「楽盗人」)

 形のない利益のない音楽を尊び欲する盗人に共鳴する。音楽はこの詩集全体に通底するテーマの一つである。同様に古典に取材した「大宜都比売(おおげつひめ)」「石長比売(いわながひめ)」「小町の鏡」からは、読む者の眼前に、ありありとした人格をもって女性たちの姿がたちあがってくる。
 作者にとっての「失ってしまったかもしれない世界」を想う心は、喪失だけではなく、形なきものに憧れ、傷つき、思索してきた多くの人々の思いと共鳴するものなのである。

さとうますみ
1942年 愛媛県南宇和郡愛南町御荘平城生まれ
武蔵野音楽大学器楽学科ピアノ専攻
日本現代詩人会、中日詩人会 会員
詩誌「青い花」会員
詩誌「ぱん・ふるーと」、詩誌「環」元会員
1994年 第一詩集『チョークの彼』不動工房(第6回 自費出版文化賞特別賞)
2001年 第二詩集『海月』書肆青樹社(第1回 詩と創造賞)

目次

一本の笛

白樫の下で

四十雀

トビウオ

わたしの輪郭

水の里

鳥を待つ

楽盗人

海図──博物館にて

荷物を預けるように

薔薇の棘を踏む

空洞になる

遠い夏の声

ある媼の語れる

戦争が終わったある日

そのきさらぎのもちづきのころ

螺旋の時

光のかけら

オールド・ブラック・ジョー

年老いたピアノ

大宜都比売

石長比売

小町の鏡

あかるい儀式

遊びをせんとやうまれけん

小さなシグナル

水の立ち姿

書評・紹介など
 『朝日新聞』2019年9月26日(評者:荻原裕幸氏)
 『中日新聞』2019年11月2日夕刊(評者:北川透氏)

惑郷の人

惑郷の人

台湾文学セレクション4

郭強生 著 西村正男 訳

四六判/フランス装 334頁 ISBN978-4-86333-147-1 C0097
本体価格2,300円(税込2,530円) 11.30.2018刊

未完の日台合作映画に魅入られた少年たちの流転の軌跡

その年、李香蘭が台湾公演に来た。その年、日本は戦争に負けた。
その年、ブルース・リーがこの世を去った。その年、日本は経済大国になった。
その年、彼らはみな17歳だった。

1973年、台湾東部の吉祥鎮に日本から映画のロケ隊がやってきた。撮影のために吉祥戯院の付近がまるで日本統治時代のように姿をかえると、時空のねじれと記憶の逆流が住民の生活リズムに変化をもたらしはじめる。そんななか映画館の看板書きの息子・小羅が生徒役に抜擢されて、幼なじみであるフィルムの運搬屋・阿昌、アイス屋の養女・蘭子、3人の関係がゆらぎはじめる。
2007年、台北にアメリカからアジア映画研究者・健二がおとずれる。戦後台湾映画と日本映画の関係をテーマとする健二の台湾訪問には、もう一つの目的があった……
中国東北地方出身の父と原住民の母をもつ小羅、日系二世の研究者・健二、湾生(台湾生まれの日本人)の映画監督・松尾、そして霊魂となってさまよう台湾人日本兵・敏郎。
映画『多情多恨』に導かれるように、70年の時空を往来して少年たちのもつれた記憶が解き明かされる。
周縁の人生を幽明のあわいに描いた長篇小説。

郭強生(かく きょうせい)John Sheng Kuo
1964年生まれ。台湾大学外文系卒業、アメリカ・ニューヨーク大学で演劇学を専攻し博士号を取得。東華大学英米文学科教授を経て、現在、台北教育大学言語創作学科教授。小説作品に『夜行之子』『断代』など。本書『惑郷之人』と散文集『何不認真来悲傷』はともに金鼎賞受賞。

西村正男(にしむら まさお)
1969年生まれ。関西学院大学社会学部教授。近年は中国語圏の流行音楽を研究。


「訳者あとがき」より

登場人物の多くは故郷喪失者の性質を帯びている。小羅の父・老羅は故郷の中国東北地方を追われて台湾にやってきた外省人であり、台湾人日本軍兵士の霊も帰るところはない。松尾森の孫でアメリカ生まれの松尾健二も日米のアンデンティティに引き裂かれている。本書の題名『惑郷の人』にあるように、彼らはみな故郷に惑う人なのである。だが、そのようなテーマや題材が個別に描かれているだけではなく、それが台湾の近現代史や日台関係史という大きな背景と関連付けられながら描かれていることが、この小説の興味深いところである。

台湾文学セレクション
重層的な共同体の記憶のなかに多様なアイデンティティを受容する台湾から、世界にひらかれた現代文学作品を紹介するシリーズ。
編集委員:黄英哲・西村正男・星名宏修・松浦恆雄

目次

時代へのレクイエム──日本語版への序  郭強生

第一部 君が代少年

  第一章
  第二章
  第三章
  第四章
  第五章

第二部 多情多恨

  第六章
  第七章
  第八章
  第九章
  第十章

第三部 君への思いを絶たん

  第十一章
  第十二章
  第十三章
  第十四章
  第十五章
  第十六章

訳者あとがき  西村正男

空誓の乱

三河戦国史最大の謎を解く!!

空誓の乱

長澤規彦 著

四六判/上製 280頁 978-4-86333-134-1 C0093
本体価格1,700円(税込1,870円) 12.10.2017刊

大河ドラマ「直虎」と同じ桶狭間以後に生きる徳川家康と三河一向一揆の謎。
『不羈の王』信長に続く時代を新しい視点から描く新戦国物語。


本書「予兆」より

「なにゆえ門徒の衆と戦わねばならぬのですか」
という築山殿の問いかけは意識して穏やかな物言いではあったが毅然たるものだった‥‥‥
「これまでも多少の諍いは、あったことでしょう。それを今になって、ことさら咎め始めたのは、なにゆえのことなのか尋ねたのです」

目次

1 清須同盟

2 孤 愁

3 ね ね

4 小牧山

5 空 誓

6 予 兆

7 死 闘

8 御坊(ごぼう)さま

9 終 息

10 奪 取

結 復 活


附 …… 蓮如・空誓関係図/三河国西部周辺図

歴史と記憶──文学と記録の起点を考える

愛知大学国研叢書第4期第2冊

歴史と記憶──文学と記録の起点を考える

松岡正子・黄英哲・梁海・張学昕 編

A5判/並製 296頁 ISBN978‒4‒86333‒135‒8
本体価格3,000円(税込3,300円) 2017.10.31刊

記憶は歴史と文化を再現することができるのだろうか。文学はどのように歴史と記憶を叙述するのだろうか。文学の叙述と歴史の叙述、そして記憶の叙述のあいだの連関と相違を、いま新たな視点からとらえなおす。
日本の愛知大学と中国の大連理工大学・遼寧師範大学・大連大学による国際学術シンポジウム「文化・文学:歴史と記憶」(2016年)の成果である日本語論文7篇、中国語論文9篇を収録。中国語論文には日本語の概要を、日本語論文には中国語もしくは英語の概要を付す。

目次

序(日本語版/中国語版) 張学昕・梁海(訳=嶋田 聡)

第Ⅰ部 文学

「興民」と小説の位置づけ──許寿裳遺稿「中国小説史」初探 黄英哲

如何在一個作品中談論文学、記憶和歴史 蒋済永

新歴史小説的文学史建構 王玉春

歴史與文学的双重変奏──賈平凹《古炉》的叙事策略 賈浅浅

侠客、江湖與意境──対《臥虎蔵龍》的一個美学解読 劉博・梁海

在精神與霊魂的臨界点──《生死疲労》中農民形象藍臉的“変臉” 李梓銘

以“人”為核心的表達──李鋭小説創作簡論 翟永明

“苦悶的象征”──厨川白村與豊子愷対西方美学思想的接受與改造 陳政・梁海

従《春香伝》到《春香》──文学経典的伝播與演変 白楊

論世界文学語境下的海外漢学研究 季進

第Ⅱ部  歴史

「歴史の視点から見た中国の対外観」序論 三好 章

自治」と「友愛」──日本統治期台湾における蔡培火の政治思想 嶋田 聡

チャン族における婚姻慣習の記憶──史詩「木吉珠和斗安珠」と入贅婚 松岡正子

戦前日本の中国語教育と東亜同文書院大学 石田卓生

『大旅行誌』にみる書院生の「ことば」へのまなざし──大正期以前の記述より 塩山正純

東亜同文書院大旅行とツーリズム──台湾訪問の例を中心に 岩田晋典


韓石泉回想録──医師のみた台湾近現代史

次世代に残す歴史の証言──政治、医療、家族、信仰、人生

韓石泉回想録──医師のみた台湾近現代史

韓石泉 著

韓良俊(台湾大学名誉教授) 編注

杉本公子(法政大学非常勤講師)、洪郁如(一橋大学大学院社会学研究科教授) 編訳

四六判/上製 406頁 ISBN978-4-86333-132-7 C0098
本体価格2,500円(税込2,750円) 2017.10.27刊

韓石泉(かん・せきせん 1897-1963)は1920~60年代に台湾の政壇と医学界で活躍した知識人。
日本の台湾領有から二年後の台南に生まれ、漢学と日本教育をともに受けて育つ。
医学を志し、台湾総督府医学校を経て、熊本医科大学で博士号を取得。台南で韓内科医院を開業。
日本統治期には政治社会運動に参加し治警事件で逮捕(判決は無罪)、戦後は第一期台湾省参議員として二・二八事件の台南における平和的解決に尽力するなど、台湾近現代史の主要事件の渦中に身を置いた。
本書は、韓氏の自叙伝『六十回憶』初版(1956年)に、韓良俊が詳細な注釈を施した第三版(2009年)を編集・訳出したもの。
開明的な考えをもって行動した著者により、政治的に敏感な時代に克明に書き残された回想録は、貴重な歴史の証言である。

この回想録は、稀にみる台湾の戦後初期の自伝で、先生がご自身と向き合いながら身を立てていく記録であるだけでなく、六十年間の重要な史料でもあります。

────胡適

目次

日本語版によせて  韓良信

凡例/韓石泉家族略系図/台南市市街図・広域図

Ⅰ 六十回憶──韓石泉医師自伝  韓石泉

はしがき

第一章 誕生と少年時代

第二章 台湾総督府医学校

第三章 医者になりたてのころと台南医院時代

第四章 恋愛史

第五章 台湾議会期成同盟運動と治安警察法違反事件

第六章 韓荘両家の新しい結婚式

第七章 韓内科医院開業のころ

第八章 留学した矢先に慈母と岳父を失う

第九章 留学生活

第十章 台湾人が経験した第二次世界大戦

第十一章 終戦

第十二章 第一期台湾省参議会議員として

第十三章 二・二八事件と私

第十四章 国民大会代表選挙への出馬

第十五章 台湾における民主への第一歩──第一期省参議会を振り返る

第十六章 銀婚式

第十七章 これまでの人生を振り返って

第十八章 おわりに

第十九章 六五続憶 (遺稿)──六十五年目の回想

 第一節 還暦記念講演茶話会

 第二節 『六十回憶』によせられた読者の反響

 第三節 次男良信の結婚

 第四節 ひき継がれていく命

『六十回憶──韓石泉医師自伝』刊行までのあゆみ  韓良俊

Ⅱ 韓石泉を語る

韓石泉先生と私  黄朝琴

十室の邑、必ず忠信ある者あらん  鄭震宇

医師の鑑──韓石泉先生  侯全成

人生の奮闘記  林占鰲

韓石泉君を憶う  杜聡明[橘千早訳]

義と慈愛の人──韓石泉先生  犀川一夫

故韓先生を偲ぶ  何耀坤

台湾史の本音と台湾人の尊厳の再現  荘永明

親子の共著  頼其萬

慈父を想う  韓淑馨

父と私  韓良信

いまなおはっきりと目に浮かぶ往事の数々  李慧嫻

三度目の命日によせて  韓良誠

父の教え  韓良誠

父に捧ぐ  韓良俊

父は私どもの心に生けり  韓良俊

はるかに慈父を想う  韓淑真

岳父に一目お会いできた縁  黄東昇

父と母から授かったすばらしい信仰  韓淑清

父を想う  韓良博

あの日を思い出して  阮琬瓔

父との思い出  韓良憲

戦中戦後の思い出──むすびにかえて  韓良信

解説  洪郁如

訳者あとがき  杉本公子・洪郁如

韓石泉年表

索引

著者:韓石泉 1897年台湾台南市生まれ。台湾総督府医学校を経て1935年に熊本医科大学に留学、1940年に医学博士。1928年3月に台南市内で韓内科医院を設立、生涯、医師として勤めた。日本統治期には台湾人による政治社会運動に参加、戦後は第一期台湾省参議員、台南市私立光華女子中学校長および理事長、中華民国赤十字社台南市支会長、台南市医師公会理事長などを歴任。

編注者:韓良俊 1936年熊本市生まれ、韓石泉の四男。台湾大学医学部歯学科卒業後、日本大学大学院歯学研究科に留学。口腔外科学専攻、歯学博士。東京医科歯科大学歯学部第一口腔外科医員。1972年に帰国した後は台湾大学医学部歯学科主任教授、台湾大学付属病院歯科部主任、台湾衛生福利部口腔医学委員会第一~四期主任委員を歴任。現在は台湾大学名誉教授。

編訳者:
杉本公子 法政大学非常勤講師。米国スタンフォード大学大学院東アジア研究科修士。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。専門分野は米中関係史。
洪郁如 一橋大学大学院社会学研究科教授。東京大学大学院総合文化研究科学術博士。専門分野は台湾近現代社会史。

「源氏物語」another story 藤式部の恋人録

紫式部が後の世に伝えたかった史実に迫る「源氏物語誕生の物語(アナザー・ストーリー)」

「源氏物語」another story
藤式部の恋人

毛井公子 著

四六版/並製 342頁 ISBN978-4-86333-129-7 C0093
本体価格1,700円(税込1,870円) 2017.10.20刊

千年の昔、平安京・東京極(きょうごく)の古びた寝殿造の屋敷で、密かに壮大な物語を書いた女性がいた。その歴史上の名は藤式部、愛称は紫式部と呼ばれている。

藤式部が著した源氏物語・紫式部日記・紫式部集と、同時代を生きた仮名(かな)の名手で三蹟のひとり藤原行成が遺した日記「権記」との接点を手がかりに、藤式部はなぜ/いかにして陰謀渦巻く藤原摂関体制の渦中で「源氏物語」を書いたのか、「源氏物語」が語ろうとするものは何かに迫る、歴史に拠る源氏物語の深読みへといざなう意欲作。

毛井公子〈筆名 万樹(まんじゅ)〉
岐阜市生まれ。経済学を修める。40歳から謡曲(能の台本)を学び、特に平安時代の古典文学に親しむ。
「伊勢物語」「源氏物語」「平家物語」等の物語を独自の画法で描く。
1997年4月名古屋市で初の個展。2007年よりジャパネスク展示をグループ活動として始め、2012年からは「源氏物語」に題材を絞って「源氏絵」を描き始める。
源氏物語を自由に読む会会員 。

Buddha 英語 文化 (田中泰賢選集)

Buddha 英語 文化
田中泰賢選集【全5巻】

田中泰賢著

A5判/上製/5巻セット/函 ISBN978-4-86333-116-7
本体価格15,000円(税込16,500円) 2017.2.14刊

第1巻 英語・文学・文化の仏教

第2巻 スティーブンス、ウィリアムズ、レクスロスの仏教

第3巻 ギンズバーグとスナイダーの仏教

第4巻 Buddhism in Some American Poets:
      Dickinson, Williams, Stevens and Snyder

第5巻 禅 Modern Zen Poems of Toshi Tanaka (1916-1996)

田中泰賢(たなか ひろよし・たいけん)
1946年 島根県隠岐島に生まれる。
1969年 京都外国語大学英米語学科卒業
1972年 広島大学大学院文学研究科修士課程言語学専攻修了
1981年 愛知学院大学に奉職(広島電機大学,1972〜1981の勤務を経て)
1994年 愛知学院大学教授

主な著書
『ゲイリー・スナイダーの愛語』英潮社, 1992
『アメリカ現代詩の愛語──スナイダー/ギンズバーグ/スティーヴンズ』英宝社, 1998
 ゲーリー・スナイダー『惑星の未来を想像する者たちへ』山里勝巳・赤嶺玲子共訳, 山と渓谷社, 2000


Buddha 英語 文化(田中泰賢選集1)英語・文学・文化の仏教

Buddha 英語 文化 田中泰賢選集①
英語・文学・文化の仏教

田中泰賢著

A5判/上製 200頁 ISBN978-4-86333-111-2
本体価格3,000円(税込3,300円) 2017.2.14刊

目次

第1章 現代社会に生きる道元禅師の教え

第2章 英語学者・鈴木勇夫教授の英訳般若心経の研究について

第3章 高橋源次氏のEveryman(『万人』)研究について

第4章 エドウィン・アーノルドの詩作品
     『アジアの光』(The Light of Asia)について

第5章 リディア・マリア・チャイルド著
     「仏教とローマ・カトリックの類似性」(翻訳)

第6章 ジェームズ・F・クラーク著
     「仏教; 言い換えれば東洋のプロテスタンティズム」(抄訳)

第7章 超絶主義季刊誌『ダイアル』に書かれた「仏陀の教え」 の大意

第8章 エミリ・ディキンスンの師,トマス・ W・ ヒギンスン著
     「仏陀の特性」の大意──故 安藤正瑛先生に捧げる──

第9章 トマス・W・ヒギンスン著
     「仏教経典『法句経』」について

第10章 故 ダイズイ・マックフィラミー師著
     「カルマ(業)とは何か」(翻訳)

第11章 Some Poems of Zen Master Dōgen
     Translated by Hiroyoshi Taiken Tanaka

Buddha 英語 文化(田中泰賢選集)第2巻 スティーブンス、ウィリアムズ、レクスロスの仏教

Buddha 英語 文化 田中泰賢選集②
スティーブンス、ウィリアムズ、レクスロスの仏教

田中泰賢著

A5判/上製 292頁 ISBN978-4-86333-112-9
本体価格3,000円(税込3,300円) 2017年2月14日

目次

第1章 スティーヴンズの無我

第2章 スティーヴンズの愛語

第3章 スティーヴンズとサンタヤナ

第4章 スティーヴンズの「日曜日の朝」

第5章 スティーヴンズのチャレンジ精神

第6章 スティーヴンズの茶の心

第7章 スティーヴンズの「空」的視瞻

第8章 スティーヴンズの小泉八雲

第9章 レクスロスに見られる小泉八雲の心

第10章 ウィリアムズの小泉八雲

第11章 仏教に出会った二人の詩人,ウィリアムズとオクタビオ・パス

第12章 ウィリアムズの心の治癒

第13章 ウィリアムズの直観

第14章 ウィリアムズの「事物を離れて観念はない」

Buddha 英語 文化(田中泰賢選集3)ギンズバーグとスナイダーの仏教

Buddha 英語 文化 田中泰賢選集③
ギンズバーグとスナイダーの仏教

田中泰賢著

A5判/上製 300頁 ISBN978-4-86333-113-6
本体価格3,000円(税込3,300円) 2017.2.14刊

目次

第 1 章 ギンズバーグの坐禅

第 2 章 スナイダーの道元──森と水の循環思想──

第 3 章 スナイダーの宮沢賢治

第 4 章 ギンズバーグの宮沢賢治

第 5 章 ギンズバーグの息

第 6 章 スナイダーの公案

第 7 章 万象はエネルギーの節目であり,渦だ

第 8 章 亀の島

第 9 章 スナイダーの仏教

第10章 スナイダーの素朴な心

第11章 スナイダーの誓願

第12章 スナイダーの禅機

第13章 スナイダーのシャーマニズム

第14章 スナイダーの青空

Buddha 英語 文化(田中泰賢選集4)Buddhism in Some American Poets:Dickinson, Williams, Stevens and Snyder

Buddha 英語 文化 田中泰賢選集④
Buddhism in Some American Poets:Dickinson, Williams, Stevens and Snyder

田中泰賢著

A5判/上製 200頁 ISBN978-4-86333-114-3
本体価格3,000円(税込3,300円) 2017.2.14刊

Buddhism in Some American Poets: Dickinson, Williams, Stevens and Snyder

Buddha 英語 文化(田中泰賢選集5)禅 Modern Zen Poems of Toshi Tanaka (1916‒1996)

Buddha 英語 文化 田中泰賢選集⑤
禅 Modern Zen Poems of Toshi Tanaka(1916‒1996)

田中泰賢著

A5判/上製 332頁 ISBN978-4-86333-115-0
本体価格3,000円(税込3,300円) 2017.2.14刊

主な内容

序文 田中泰賢


対訳 田中登志(1916‒1996)現代禅詩集
   禅 Modern Zen Poems of Toshi Tanaka (1916‒1996)


Appendix

1 田中愛子「ちぎれ雲」

2 田中省禅「愛執」

3 田中省禅「川柳と高校生」

4 田中俊朗「つゆくさの花」第1号~第15号

5 飯尾山完全寺八十八箇所お大師さま並びに御堂管理者一覧表

6 田中省禅「島根県隠岐数え歌」

7 楢崎一光老師の書

8 楢崎通元老師の米寿(88歳)の書

9 田中正一氏の観音様の版画と書

10 佐藤省道老師の米寿(88歳)の書

11 手代木和子氏の陶芸作品

12 田中省禅の書

13 田中満枝の日本画

不羈の王

刷新された史料で描く、若き信長の生きた世界。

不羈ふきの王

長澤規彦 著

四六判/上製 618頁 ISBN978-4-86333-109-9 C0093
本体価格2,100円(税込2,310円) 2016.11.7刊

天文五年(1536)還俗した今川義元は軍師雪斎と天下をめざしった。それから四半世紀後、織田信長は桶狭間において駿遠参三州の国守であった義元を倒す。駿河、三河、尾張、美濃を舞台に織りなされた歴史を活写する渾身の処女作。

本書より

信秀は小枝を拾うと地面に字を書いた。
  不羈ふき
「これは馬に付ける革と書いてな。これがみなあらずで、くつわのない馬じゃ。馬が生まれたときのままでおる、本性の姿よ」……
「人も同じことよ。あるじのない者など天下のどこにもおらん。わしやおまえとて同じことよ。されど、だからこそ人は不羈の性根をなくしてはいかんのだ」   

目次

序 公案

吉法師
三河物語(前編)
清玉
三河物語(後編)
美濃大乱
武者始め
竹千代
華燭
交換
占領と赦免
病死
反乱
別れと出会い
清須攻め
変死
最期
変調
謀殺
上洛
伝説

桶狭間

結 波紋
  余録

附……尾張国周辺図/織田氏信長関係図

原点としての恵那の子ども時代

原点としての恵那の子ども時代

牧野剛 著 加藤万里 編

A5判 106頁 ISBN978-4-86333-110-5 C0095
本体価格1,000円(税込1,100円) 2016.10.15刊

80年代に「予備校文化」がクローズアップされた時、その最前線にいた河合塾の名物講師である牧野剛さんが2016年5月に逝去する前に語った恵那の子ども時代をまとめたもの。
予備校講師にとどまらないそのスケールの大きさで、まだまだやるべき多くのことがあったと惜しまれる反面、その全力疾走した充実の人生を多くの人が讃える著者の原点を垣間見ることができる。

牧野 剛(まきの つよし)
1945年9月岐阜県恵那市に生まれる。1961年岐阜県立恵那高校に入学。1972年名古屋大学文学部卒業。1976年河合塾国語科講師となり、多くのことを提案、実現した。2016年5月享年70歳にて急逝。

加藤万里(かとう まり)
牧野剛の妻。河合塾文化教育研究所所属。本書は牧野が語ったことを加藤が書き起こしたものが基となっている。


目次

恵那の「戦後民主主義教育」
大井宿として栄えた恵那
良寛さんの紙芝居
いつも腹をすかせていた―1950年代の恵那の暮らし
初めての自分の本『ノートルダムのせむし男』
小学校の空疎な「民主的」教師たち
教育とは間違うことに思いを馳せること
勉強を教えなかった野球部の古山先生
二宮金次郎を教えた西尾先生
東京オリンピックに出た同級生の笠木のこと
「黒子に徹しろ」といった親父
マツタケ狩りの魔力
成績優秀だった兄たち
子ども時代の淡い恋―都会から転校してきた少女
中学で初めてのバリケードを築く
中学三年生で迎えた六十年安保
恵那高で教師から民青にオルグされる
恵那高の火事から
二項対立的思考を越えて


牧野さんと「予備校文化」なるもの(青木和子)
牧野追懐記(茅嶋洋一)
断章 牧野剛の死に寄せて(菅 孝行)
編者あとがき(加藤万里)
2015年12月25日~2016年5月20日(佐藤孔美)

沈黙の島

沈黙の島

台湾文学セレクション3

蘇偉貞 著 倉本知明 訳

四六判/フランス装 348頁 ISBN978-4-86333-102‒0 C0097
本体価格2,300円(税込2,530円) 2016.3.15刊

あなたはまだこの人生を続けたい?

香港の離島に暮らしながら、アジア各地でビジネスの実績をつむ晨勉(チェンミェン)。
自立していて孤独な雰囲気をもっているから島が好きだという彼女は、30歳の誕生日に離島にもどる船でダニーと知りあう。台北には鏡像さながらのもうひとりの晨勉がいて、同じころ華僑男性の祖と出会っていた。ふたりの晨勉が生きていることで、はじめてその人生は空白なく満たされていくのだ。
香港・台北・シンガポール、そしてバリ島と、魂の故郷をもとめて流転したのちに、晨勉の選択する生き方とは。

国家や民族、階級やジェンダーといったあらゆるアイデンティティを脱ぎ去り、個/孤としての女性の性と身体を見つめた、台湾現代文学作家・蘇偉貞の代表作。
第一回時報文学百万小説特別審査員賞受賞。

蘇偉貞(そ いてい)Su Wei-chen
1954年台湾台南生まれ。外省人二世の女性作家。中華民国政治作戦学校演劇科卒業後、国防部芸術工作総隊などで軍職を歴任、退役したのち編集の仕事に就きながら、旺盛な執筆活動を展開していく。女性の性と身体を独特の美意識で描きだし、ジェンダーやエスニシティ研究などに影響を与えるとともに、自らが育った眷村をテーマにした作品も数多い。作家張愛玲の研究者としても知られ、台湾の国立成功大学で教鞭を執るなど、創作と研究を両輪に活躍する。

倉本知明(くらもと ともあき)
台湾・文藻外語大学助理教授。専門は比較文学。台湾高雄在住。


「訳者あとがき」より

国家や民族、階級やジェンダーといったあらゆる自己認識を剥ぎ取った、一個の島嶼として自らの身体を見つめた『沈黙の島』は、アイデンティティをめぐる政治的な駆け引きが火花を散らしていた1990年代中葉の台湾において発表されたのであった。社会の至るところで「私」とは何者であるかといった議論が喧しく議論されていた当時、何者でもない「私」を主張する手段としておのれの身体を沈黙する一個の島嶼として描いたことに、このテクストのもつ政治的意義がある。

台湾文学セレクション
重層的な共同体の記憶のなかに多様なアイデンティティを受容する台湾から、世界にひらかれた現代文学作品を紹介するシリーズ。
編集委員:黄英哲・西村正男・星名宏修・松浦恆雄

書評・紹介など
 『中国21』Vol.46 2017年3月刊(評者:赤松美和子氏)

躯の中の環球

躯の中の環球

菊池一隆

四六判/並製 121頁 ISBN978-4-86333-101-3
本体価格1,200円(税込1,320円) 2015.8.15刊

第一詩集『雪中行』(1989年)、第二詩集『天涯回夢』(2000年)に続く第三詩集として『躯の中の環球』を15年ぶりに上梓する。本詩集の題名「環球」は中国語であり、日本語でいえば「地球」である。題名では、「回る」、「自転する」というイメージを含む「環球」をあえて使用した。
私は相変わらずサファイアの如く輝く美しい地球という星の上で人生を歩き続けている。回転する地球の表皮を歩きながら世界の深層、否、人々を発見する。歩いていると、マクロとミクロが合体し、そして、逆転していく不可思議な感覚にとらわれることがある。(後記より)

菊池一隆
1949年12月18日宮城県出身、福島育ち。筑波大学大学院博士課程単位取得満期退学。現在愛知学院大学文学部教授。博士(文学)、博士(経済学)。

目次

第一編 アジア

野原
福島からの出発、そして福島(日本)
過去・未来列車(日本)
異常気象(日本)
津波(日本・宮城県閖上)
原点―宮司菊池敏を追悼す―(日本・宮城県角田)
台北駅(台湾・台北)
二二八平和公園(台湾・台北)
ホロホロ鳥(台湾・台北)
縄張り(台北の中央研究院)
フィリピン貧民街(フィリピン・マニラ)

第二編 欧州

暴力バー(フランス・パリ)
枯葉降り積む車に(フランス・リヨン)
ハートフラワー(ハンガリー)
アウシュビッツ(ポーランド)
リバプール(イギリス)
孤独な鳩(ロシア・ウラジオストク)
ソ連の勇士、今いずこ(ロシア・ウラジオストク)
燕(ロシア・ユジノサハリンスク)
レーニン(ロシア・ユジノサハリンスク)
回る道(ロシア・ユジノサハリンスク)

第三編 南北アメリカ

地球の裏という表(コスタリカ・サンホセ)
言の葉(コスタリカ・サンホセ)
コスタリカ(コスタリカの海岸)
海の見える停車場の老人(ハワイ・ホノルル)
雀のような小鳩(ハワイ・ホノルル)
孤独な女(ハワイ・ホノルル)
バンクーバー(カナダ・バンクーバー)
ナイヤガラ瀑布(カナダ)
海の雷鳴(キューバ・ハバナ)
カリブ海(キューバ)
ああ! ゲバラ(キューバ)

第四編 アフリカ

朝なき夜を夜へ(南アフリカ・ケープタウン)
南アフリカの早春(南アフリカ・プレトリア)
DANGEROUS AREA !(南アフリカ・ヨハネスブルグ)
ダンケ ニヤボンガ(ダーバン→イーストロンドン)
おお! 魂のアフリカ(南アフリカ・ケープタウン)

第五編 エピローグ―愛しき地球―

地球が割れる―忘却の日本国民に捧げる唄―

太陽の血は黒い

太陽の血は黒い

台湾文学セレクション2

胡淑雯 著 三須祐介 訳

四六判/フランス装 464頁 ISBN978-4-86333-099-3 C0097
本体価格2,500円(税込2,750円) 2015.4.30刊

すべての傷口はみな発言することを渇望している──。
戒厳令解除後に育った大学院生のわたし李文心と同級生小海。ふたりの祖父をつなぐ台湾現代史の傷跡。
セクシュアル・マイノリティである友人阿莫の孤独。台北の浮薄(クール)な風景のなか、忘却の誘惑にあらがい語りだす傷の記憶が、短編をコラージュするかのように紡がれる。気鋭の作家による新たな同時代文学への試み。

胡淑雯(フー シューウェン)Hu Shu-wen
1970年台湾台北生まれ。台湾大学外文系卒業。新聞記者、編集者、女性運動団体に専従した時期を経て、現在は作家活動に専念している。台北文学賞、時報文学賞などを受賞。

三須祐介(みす ゆうすけ)
1970年生まれ。立命館大学文学部教員。専門は近現代中国演劇・文学。


「訳者あとがき」より

この作品は、台湾社会が抱える諸問題を、過去の歴史と現在をオーバーラップさせつつ、戦後国民党とともに大陸から渡ってきた外省人と日本時代を経験している本省人との間に横たわる軋轢(省籍矛盾)、二・二八事件や白色テロといった政治的抑圧、省籍矛盾とまったく無関係とはいえない都市の貧困(あるいは都市と農村の経済格差)、女性やセクシュアリティなど社会的弱者の問題を、まさに闇の中から「抉りだす」というような筆致で描き出している。

目次

語ることの困難と記憶の不安定感──日本語版序  胡淑雯

1 小光シャオクアン

2 小海シャオハイ

3 阿莫アモ秋香チウシアン

4 来来飯店

5 楽蒂ローディ

6 お嬢様の試験

7 裸の海岸

8 西門町・獅子林・欲望という名の電車2.0

9 処女

10 マンション・バー

11 天天開心

12 白いプレゼント

13 ガーリーボーイ

14 チャーリー・パーカー

15 小さいころのできごと

16 ただです、ご自由に・さよなら小海

17 眠れない

18 G

0 後記

台湾文学セレクション
重層的な共同体の記憶のなかに多様なアイデンティティを受容する台湾から、世界にひらかれた現代文学作品を紹介するシリーズ。
編集委員:黄英哲・西村正男・星名宏修・松浦恆雄


書評・紹介など
 『週刊読書人』2015年7月3日号(評者:山口守氏)
 『朝日新聞』2013年6月5日
 『中国21』Vol.44 2016年3月刊(評者:橋本恭子氏)

『フーガ 黒い太陽』洪凌著/桜庭ゆみ子訳

フーガ 黒い太陽

台湾文学セレクション1

洪凌 著 櫻庭ゆみ子 訳

四六判/フランス装 364頁 ISBN978-4-86333-062-7 C0097
本体価格2,300円(税込2,530円) 2013.2.28刊

我が子よ、私の黒洞(ブラックホール)こそおまえを生みだした子宮──。
母と娘の葛藤物語を装うリアリズム風の一篇からはじまり、異端の生命・吸血鬼、さらにはSFファンタジーの奇々怪々なる異星の存在が跋扈する宇宙空間へ。
クィアSF小説作家による雑種(ハイブリッド)なアンソロジーの初邦訳。中国語版『黑太陽賦格』も台湾にて同時刊行。

洪凌(ホン リン)Lucifer Hung
台湾を代表するクィアSF小説作家。台湾大学外文系卒。英国サセックス大学にて修士号、香港中文大学にて博士号取得。現在、国立中興大学人文社会科学研究センター博士後研究員を経て、現在、世新大学性別研究所助理教授。
時に漫画チックな語り口を装いつつ、セクシュアル・マイノリティの場から、サイエンスファンタジー、サイバーパンク、テクノゴシック、あるいは武侠小説等々、各領域にまたがるハイブリッドのディスクールを披露する。

櫻庭ゆみ子(さくらば ゆみこ)
慶應義塾大学准教授。専門は中国現代文学。


「訳者あとがき」より

男性と女性、生と死の境界があいまいで識別しがたいごた混ぜ状態は、ブリューゲルのカーニバルを描いた絵のように、猥雑でおかしいのである。本来ならセクシュアル・マイノリティとして社会の片隅に追いやられ存在の意味をそれだけ意識せざるを得ずに悲劇の色調を帯びがちな状況を、グロテスクな笑いでひっくり返す。情緒の罠に陥らないように、緻密な計算をしつつ冷静にすり抜ける。サイバー空間を自在に泳ぐハッカーのように。
目次

玻璃(ガラス)の子宮の(うた)

月での舞踏(ダンシング オン ザ ムーン)

星光(スターライト)麗水(リイシュイ)街を横切る

暗黒の黒水仙(ダフォディル)
 その1 闇夜の変奏曲
 その2 獣難

肉体錬金術
 その1 記憶は晶片(メモリチップ)の墓碑
 その2 水晶の眼球(クリスタル アイ)

髑髏(されこうべ)の地の十字路

サロメの子守歌

唯一の獣、唯一の主

勇将の初恋と死への希求

白夜の詩篇
 その1 寓話創神記
 その2 暗黒の黙示録
 その3 夜陽(ヒュペリオン)の誕生

書評・紹介など
 『図書新聞』2013年7月27日号(評者:中沢けい氏)
 『週刊読書人』2013年7月19日号(評者:垂水千恵氏)
 『日経新聞』2013年6月5日夕刊(評者:小谷真理氏)
 『ダ・ヴィンチ』2013年8月号(紹介:石森康子氏)

台湾文学セレクション
重層的な共同体の記憶のなかに多様なアイデンティティを受容する台湾から、世界にひらかれた現代文学作品を紹介するシリーズ。
編集委員:黄英哲・西村正男・星名宏修・松浦恆雄

職業人としての柿本人麿呂

万葉集鑑賞 職業人としての柿本人麻呂

土方賀陽 著

四六判/並製 178頁 ISBN978-4-86333-073-3
本体価格 1,200円(税込1,320円) 2014.1. 刊

「人麻呂=産業官僚」説の視点から、新たに「万葉集」を読み解く。

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乱れ雲

文芸同人誌〈TEN〉に五年にわたり連載された渾身の長編小説!

乱れ雲

葵みのり(文芸同人誌「TEN」同人)

四六判/上製 ISBN978-4-86333-061-0 C0093
1,500円(税込1,650円) 2013.1.10刊

「あとがき」より

時代を超えて綴られる家族の物語
小学校一年の二学期までしか戦前の名古屋に住んでいない私の記憶の中の町の風景は、ぼんやりした色彩に乏しい映像でしかない。それなのに鮮明に思い出す場面が多いのは、その後折りにふれて聞いた母や祖母、叔父叔母たちの思い出話によって形づくられたものであろう。そうした意味でも、これは昭和という時代の名古屋の、どこにでもあった家族の物語である。
サヨナラとコンニチハと

サヨナラとコンニチハと

市川ジュンコ詩集  詩と評論「ぱん・ふるーと」同人

四六判/並製 ISBN978-4-86333-060-3 C0092
本体価格1,500円(税込1,650円)  2012.12.25刊

「あとがき」より

前の詩集の最後の作品に夫と二人自転車を並べて走るシーンがありました。その人は二〇一一年早春、あの地震、津波と時を同じくして旅立ってゆきました。地球も日本も何か危うい淵に立っているような……。流れ星のようにはやいときのながれ。十六年の流れのなかの一齣、ひとこまが作品になって一冊の詩集になりました。
侯孝賢の詩学と時間のプリズム

侯孝賢ホウシャオシェンの詩学と時間のプリズム

前野みち子・星野幸代・西村正男・薛化元 編

A5判上製 266頁 ISBN978-4-86333-051-1
本体価格2,500円(税込2,750円) 2012.01.31刊

台湾の映画監督侯孝賢と脚本家朱天文との交感から生まれる、偶然性に身を委ねつつも精緻に計算し尽くされた映像世界。フィルムにおさめられた叙事のスタイルを台湾、香港、アメリカ、カナダ、日本の論者が読み解く。侯孝賢と朱天文を迎えておこなわれた二つのシンポジウムの座談会および講演も収録。現実感の希薄化が急速に進行する現代社会においてこそ、生活の現場に寄り添い、「見ること」「信じること」「記憶すること」、そしてそれを次世代に伝えていくことの重要性が語られる。

目次

はじめに  前野みち子


朱天文、沈従文との〈めぐりあい〉
 ──侯孝賢の自伝映画  葉月瑜 ダレル・ウィリアム・デイヴィス(小笠原淳訳)

侯孝賢が台湾百年史映画を創るとき──『百年恋歌』における歴史の記憶  藤井省三

侯孝賢の『悲情城市』──国内外の文化大使  ジェームズ・アデン(許時嘉訳)

二十年後から『悲情城市』再考──音声・映像・時間・空間  陳儒修(許時嘉訳)

パリの長境頭(ロングテイク)──侯孝賢と『レッド・バルーン』  張小虹(星野幸代訳)

侯孝賢の「記憶」との対話──『珈琲時光』  ミツヨ・ワダ・マルシアーノ

時の鳥瞰──侯孝賢映画の時間性  盧非易(南真理訳)

侯孝賢の詩学と時間のプリズム
  侯孝賢+朱天文+葉月瑜+盧非易+池側隆之 司会 藤木秀朗(小坂史子・秋山珠子通訳)

私の映画人生/私と侯孝賢映画  侯孝賢+朱天文(村島健司訳/西村正男監修)


侯孝賢フィルモグラフィー
あとがき  薛化元

台湾文化表象の現在

現代台湾が創出する文化表象世界に深く関与する。

台湾文化表象の現在いま 響きあう日本と台湾

前野みち子 星野幸代 垂水千恵 黄英哲編

A5判/上製 296頁 ISBN978-4-86333-032-0
本体価格3,000円(税込3,300円) 2010.11.10刊

台湾の文化表象には、幾層にも重なる共同体としての記憶と、そこに生きる個人のアイデンティティに対する問いがある。問われるのはナショナリティに限らない。エスニシティもセクシュアリティも、他者との関係によって自在に変容しうるものであるかのようである。そのゆらぎを対象化し、歴史を行き来し、越境を繰り返して、現在このときと交錯させる視座から読み解く。

目次

はじめに  前野みち子

Ⅰ 往還するまなざし──自著を語る

『あまりに野蛮な』について 津島佑子

振り返れば──『海神家族』から『茶人児』までの創作過程をめぐって 陳玉慧(許時嘉訳)

「美しい」日本の私 朱天心(赤松美和子訳/星野幸代監修)

Ⅱ 召喚されることば──クィア・テクスト論の先端

周縁からの声
 ──戒厳令解除後の台湾セクシュアル・マイノリティ文学 劉亮雅(小笠原淳・西端彩訳/濱田麻矢監修)

SFの想像力は、クィア理論と連動する 小谷真理

ユートピアの去った後
 ──二十一世紀の台湾セクシュアル・マイノリティ文学 紀大偉(小笠原淳訳/濱田麻矢監修)

紀大偉のクィアSF「膜」を読む 白水紀子

邱妙津『ある鰐の手記』と村上春樹『ノルウェイの森』との間テクスト性について 垂水千恵

Ⅲ 交錯するからだ──身体表象の政治学

愛の不可能な任務について
 ──映画『ラスト、コーション』に描かれた性・政治・歴史 張小虹(羽田朝子訳)

見えない欲望──『彷徨う花たち』における「フェム」表象について 張小青

台湾小説における身体の政治学と青春想像──国家からジェンダーまで 梅家玲(許時嘉・星野幸代訳)


  あとがき  黄英哲・星野幸代(編者代表)

台湾映画表象の現在

台湾映画表象の現在いま
可視と不可視のあいだ

星野幸代・洪郁如・薛化元・黄英哲 編

A5判/上製 266頁 ISBN978-4-86333-045-0
本体価格3,000円(税込3,300円) 2011.7.10

台湾ニューシネマから電影新世代まで、歴史的文脈と結び付けて語られることが多い台湾映画を、台湾・大陸中国の論者がその表象や映像効果から鮮やかに読み解く。また、台湾ドキュメンタリーの現場では、戒厳令解除後にはじまる民間の歴史記憶の掘り起こしのなかで、公的な歴史の虚構性とどのように向きあいそれを映像化してきたのか。
転位する記憶と記録をめぐる台湾映画論。
黄建業・張小虹・陳儒修・鄧筠・多田治・邱貴芬
呉乙峰・楊力州・朱詩倩・簡偉斯・郭珍弟・星名宏修

目次

はじめに  星野幸代

Ⅰ 微光と陽光の修辞学──台湾ニューシネマから電影新世代へ

台湾ニューシネマと文学との結婚
 ──険悪な夫婦か、仲睦まじい夫婦か 黄建業(杉江叔子訳/星野幸代監修)

身体―都市のフェードイン/フェードアウト──侯孝賢と『珈琲時光』 張小虹(許時嘉訳)

見たもの、聞いたものを信じてよいか?──『ヤンヤン夏の想い出』の構造と対比 陳儒修(星野幸代訳)

通過儀礼の中で苦闘する青春──エドワード・ヤン映画における少年形象 鄧筠(星野幸代訳)

『海角七号』における時間と空間との交錯 陳儒修(小出道也訳)

台湾映画と沖縄映画を照らしあう
 ──『海角七号』と『悲情城市』、『ナビィの恋』と『ウンタマギルー』のアナロジー論 多田 治

Ⅱ 転位する記憶と記録──台湾ドキュメンタリーの現場

歴史のさざ波に映る模糊とした木陰 黄建業(范姜惠琳訳)

台湾のドキュメンタリーと社会運動 邱貴芬(田村容子訳)

台湾のドキュメンタリー映画と私 ドキュメンタリー映画監督 呉乙峰(稲吉亮太訳)

『生命(いのち)──希望の贈り物』 監督 呉乙峰(小笠原淳訳)

『新宿駅、東口の東』 監督 楊力州・朱詩倩(小出道也訳)

植民地モダニティ再考 『VivaTonal跳舞時代』監督 簡偉斯(大橋義武訳)

演じられた「新女性」 『VivaTonal跳舞時代』監督 郭珍弟(大橋義武訳)

「跳舞時代」の時代──台湾文学研究の角度から 星名宏修


  あとがき  洪郁如

土木技師 田淵寿郎の生涯

名古屋に百メートル道路を造った都市計画家の人間像

土木技師 田淵寿郎の生涯

重網伯明著

A5判 254頁 ISBN978-4-86333-022-1 C0023 
2010.3.3刊 ※品切れ

名古屋開府四百年、その戦後復興を実現させた田淵寿郎の技師としての足跡と人間的魅力を描き、貴重な写真で戦後名古屋の姿を伝える書。田淵寿郎は「百メートル道路と平和公園への大規模墓地移転を敢行した都市計画家」として知られているが、さまざまな場面での彼のエピソード……川の専門家としての識見と基盤づくりの腹の据わり方、名古屋の戦後復興に中国大陸での上海・北京復興の体験を活かしたこと、引退後に発生した伊勢湾台風の被災地で災害対策を説いて回ったこと、東海地域の全体構想を胸に具体的な施策にあたり、当地域が今日あるための主要な事業に関わっていたこと、詩歌の世界にふれる心根の持ち主であり、若い日々に汚職事件を目のあたりにし清貧を信条として実際にそれを貫いたこと、などを通して、「土木の世界に人の心を注ぎ込んだ」人間的魅力あふれる技師であったことが伝わってくる。主要施設・出来事紹介と年表を付す。

主な内容

序 二つの試練を乗り越えた清貧と家族愛

Ⅰ 青年時代

船乗りになりたかったが  造船の夢破れて土木へ  ボート部の友情

Ⅱ はじめての陸奥

吹雪のときは、読書会  関東大震災──百メートル道路のきっかけ

紀ノ川と吉野──信仰の道  上海復興──中国の奥深さ

Ⅲ 終の住み処になる名古屋

今渡ダムの操作規程をつくれ  工業用水研究会

徳山ダム  リニア新幹線と伊那谷  再び中国へ

Ⅳ 第一の試練──梁山泊から生まれた百メートル道路

名古屋大空襲と広島の原爆  十八万余基の墓移転、田淵さんもその一角に

合併に全力投球  自然の土砂を利用した名古屋港  田淵さんの美学

Ⅴ 第二の試練に挑む──鯱が水を呼んだ

名古屋城の再建  ボート部の友情、国体を誘致  室戸台風の経験

天は私たちに罰を与えた  あの夜がよみがえる・伊勢湾台風五十年

Ⅵ 現代への遺産──平和の祈り

平和堂の祈り  最後の日記  都市計画の名作、いまに生きる


[付]主な施設・出来事の紹介──愛知用水・伊勢湾台風復興ほか20事項

田淵寿郎関係年表
文学と香道

日本的感性が育んだ香道の秘鍵を伝える稀覯書。

文学と香道

早川甚三著

A5判/上製/函入 292頁 ISBN978-4-901095-90-7 C1095 
本体価格 4,000円(税込4,400円)  2007.8.26刊

日本の秘められた芸術・香道。源氏香に代表される組香をはじめ、いにしえの人々は香を聞くことにより、幽玄の世界に魂をもってふれようとした。この書は、その真髄を新しい時代に伝えようとした文学研究者による香道の世界へのいざないである。

高松宮御前講演より

西洋の思索は絶対を我に置くに対して、東洋の思考は絶対を彼に置くことにその特徴を持っているのでございます。日本、またこの絶対を彼に置くことにその特徴を発揮して参りました。香道が正しくこの範疇に入っているのでございます。今後世界の交易によって文化また世界的とならざるを得ない時、日本人はこの絶対の彼と我との関係を熟慮しなければならないと考えます。
主な内容

日本文芸と香道──日本文芸の文芸性と香道の芸術精神

万葉集と香  香銘と和歌  香合の判詞  組香の文学性  枕草子と組香
源氏物語と源氏千種香  いわゆる源氏香図について  高松宮殿下御前講演

虹と日本文藝

虹と日本文藝 ─資料と研究─

荻野恭茂

B5判/上製/函 450頁 ISBN978-4-901095-79-2
本体価格9,000円(税込9,900円) 2007.2.28刊

虹の資料と文学研究。

石岡繁雄が語る氷壁・ナイロンザイル事件の真実

好評新装版刊行! 初めて明かされる井上靖の傑作「氷壁」のモデル事件の全貌!

石岡繁雄が語る 氷壁・ナイロンザイル事件の真実

石岡繁雄・相田武男著   著者のホームページへ

四六判/並製 464頁 ISBN978-4-86333-015-3 C0036
本体価格 2,000円(税込2,200円) 2009.8.15刊

昭和30年正月、前穂高岳頂上直下を登攀中のパーティが最新鋭ナイロンザイルの切断により墜死した。登山家たちが信頼を寄せていたナイロン製ザイルは、なぜ切れたのか? メーカーは専門家の指導で公開実験を行ない、ナイロンザイルの高い性能を証明した。その結果パーティに疑惑の目が注がれることとなった。一方、墜死した若者の兄・石岡繁雄は自らの手でナイロンザイルは鋭い岩角で極端に弱くなることを確認、「公開実験は手品だ」と巨大な企業体と専門家を相手に真実の開示を求めて立ち上がった。世に言う「ナイロンザイル事件」である。この事件をモデルにした井上靖の新聞連載小説「氷壁」は大反響を呼び映画化され、2006年にもテレビドラマ化された。本書は「ナイロンザイル事件」の真実と全貌を、当事者たちの語りと文章を駆使して浮び上がらせ、原子力発電所をはじめ頻発するメーカーによる欠陥隠し事故の原点としての事件の全貌を伝えるドキュメントである。今日問題化しているビルメンテ中のナイロンロープ切断事故原因究明や登山家・ナイロンザイル使用者のための研究文献も資料編に収録した。
序・まえがき・目次(PDF)

主な内容

Ⅰ 挑戦

下界で初正月/冬期初登攀計画/遭難!/ザイルが切れた!/報告書だ!/科学的調査の必要

Ⅱ 疑惑

失礼な手紙/手製の実験装置/手品だ!/いわれ無き批判/遺体発見!/登山家の良心/困難な道を選ぶ

Ⅲ 波紋

なぜ面取りを?/『山日記』に問題/これが検事の調書/公開質問状/無視された登山者の命/続く「ザイル切断」

Ⅳ 決着

15年前と変わらぬ弱さ/ザイルの限界をなぜ示さない/本当の公開実験/命を守る技術/世界初ザイルに基準/最後の『事件報告書』


[資料編]

篠田軍治他「登山用ナイロンロープの力学的性能」

岩稜会「前穂高東壁事件について」

石岡繁雄「ナイロンザイルの強度」

斎藤検事からの不起訴理由の告知

岩稜会「第二、三回公開質問状」

石岡繁雄「『氷壁』をめぐって」

石岡繁雄「ザイルの選び方と使い方──安全基準に関連して」

石岡繁雄「ザイルの安全基準はどうなる──安全基準の歴史と今後の方向」

石岡繁雄・笠井幸郎「登山綱の動的特性と安全装置の研究」

石岡繁雄・笠井幸郎・山木 薫「登山用緩衝装置の研究」

石岡繁雄「ナイロンザイルの岩角での実験」

ナイロンザイル事件関係年表

屏風岩登攀記

今西錦司・井上靖・田中澄江氏らが推奨する登攀記の名著復活!新装復刊

屏風岩登攀記

石岡繁雄  著者のホームページへ

四六判/上製 452頁 ISBN978-4-901095-87-7 C0095
本体価格 2,300円(税込2,530円) 2007.6.2刊 ※品切

本書は戦後初のビッグクライムを人間界の葛藤と織り合わせて表現したものであり、また戦前から戦後にかけての登山界のありさまを今に伝える貴重なドキュメントでもある。
序・まえがき・目次(PDF)

[花の百名山の著者・田中澄江さん評]

岩稜会によって初登攀された屏風岩中央カンテ登頂の手に汗を握るような克明な記録や思い出の山旅の記などをおさめている。しょせん登山は「行」の世界であるとする石岡さんの山に対する姿勢は、限りなく謙虚に、絶え間なく未知への夢で燃え、かつ不屈の闘志をひそめている。それは私たちが人生という登山を生きるのとよく似ていて、登山への愛情を語る氏の筆は、深い人間への愛を語って胸を打つ。
主な内容

Ⅰ 思い出の山旅

思い出の山旅  初めての穂高  惨敗  高所露営  戦時中の登山  戦争と釜トンネル

Ⅱ 屏風岩登攀記

屏風岩への挑戦  勝つための条件  第五次攻撃──完登  屏風岩回想の登攀

地形および登攀小史  岩登りの慣習律について

Ⅲ 戦後の登山

戦後登山の思い出話  ある岩稜会員の話  雲海上の日食  墓参 ──ナイロンザイル事件の一断面

ザイルに導かれて登山家石岡繁雄の半生

ナイロンザイル事件に挑み解決した物理学者の半生 《オンデマンド出版予約受付中》

ザイルに導かれて 登山家石岡繁雄の半生

石岡繁雄著(岩稜会・石岡高所安全研究所長)著者のホームページへ

B5判/上製/函 336頁 ISBN4-901095-53-6 C0023
本体価格 4,000円(税込4,400円) 2005.5.1刊 ※品切

昭和30年厳冬期前穂高岳東壁において発生した遭難は、井上靖の新聞連載小説『氷壁』を生み出し映画化され、「ナイロンザイル事件」として高度経済成長へ向かう日本社会に波紋を投げかけた。穂高屏風岩初登攀をなしとげた登山家で遭難者の実兄である著者は、応用物理学者としてナイロンザイル事件を解決し、世界初のザイル安全基準制定の実現にこぎつける。著者の波乱に富んだ半生を複合的視点からまとめた貴重な証言の書。

主な内容

Ⅰ 自分史

Ⅱ ナイロンザイル事件の解明

Ⅲ 発明と研究

きんごまんだら 弐

きんごまんだら 弐

内藤金吾

A5判/並製 210頁 ISBN4901095544(978-4-901095-54-9)
本体価格1,500円(税込1,650円) 2005.1.20刊

「日本で最初の金吾は誰か」全国をめぐる“きんご”探しの旅。

ビルマ日記 1965-1967

ビルマ日記 1965-1967 金色に輝く仏陀の国に赴任して

岩内健二

A5判/並製 266頁 ISBN4901095617(978-4-901095-61-7)
本体価格2,000円(税込2,200円) 2005.10.15刊

1965-1967。首都ラングーン日本人学校での2年間を思い出とともに描く。

火事と喧嘩は江戸の華

火事と喧嘩は江戸の華

巨榧山人

四六判/上製 254頁 ISBN490109520x(978-4-901095-20-4)
本体価格1,200円(税込1,320円) 2002.9.1刊

世情の偽善を見抜き、無常を説く。
宗教・芸術・医学・教育・歴史にまつわる虚妄に惑わされないために—
ホンネだけを追求する激辛異見エッセイ。

中央西線

歩くことで見えてくる風景

中央西線

佐藤蝉三著

四六判/上製 308頁
本体価格 1,500円(税込1,650円) ※品切

信州や名古屋近郊の空気の匂いを感じさせるエッセイ、長野から日本海までを歩き通した紀行文、自然科学者としての現代文明批評など、自然との交感の中に人間と社会の諸相を描く散文詩風随想集。人間の弱さを自覚する者のみがもつ優しさ、勁さが読者を浄福のひとときへと誘う。カラー素描12葉。

批評のはじまり=「うた」への架橋

批評のはじまり=「うた」への架橋

佐藤蝉三著

四六判/上製 304頁
本体価格 2,000円(税込2,200円) ※品切

《社会的なもの》を《精神的自己》に支えられた短歌的抒情へと架橋する道はありうるのか。歌人である著者が、短歌表現の拡大をめざして批評のありかたとその多様な断面を論じ、志賀直哉の短編や現代文学の中に今日の《うた》が抱えている諸問題と可能性をさぐる評論集。カラー素描11葉。

架橋


在日朝鮮人作家を読む会(編集人:磯貝治良)発行  発売=あるむ
A5判/並製 約96頁
本体価格500円(税込550円)

架橋 2012年春 vol.31

架橋 2012年春 vol.31

104頁 ISBN978-4-86333-049-8 

架橋 2011年春 vol.30

架橋 2011年春 vol.30

168頁 ISBN978-4-86333-034-4 2011.2.1刊

架橋 2010年春 vol.29<

架橋 2010年春 vol.29

98頁 ISBN978-4-86333-023-8 2010.2.15刊

橋 2009年春 vol.28

架橋 2009年春 vol.28

116頁 ISBN978-4-86333-010-8 2009.2.1刊

架橋 2008年春 vol.27

架橋 2008年春 vol.27

72頁 ISBN978-4-901095-95-2 2008.2.1刊

架橋 2006年冬 vol.26

架橋 2006年冬 vol.26

72頁 ISBN4901095765(978-4-901095-76-1) 2006.11.25刊

架橋 2005年冬 vol.25

架橋 2005年冬 vol.25

84頁 ISBN4901095641(978-4-901095-64-8) 2005.11.15刊

架橋 2005年春 vol.24

架橋 2005年春 vol.24

84頁 ISBN4901095277(978-4-901095-27-3) 2005.1.1刊


vol.18 1998夏

140頁 ISBN4901095218(978-4-901095-21-1) 1998.6.15刊 

vol.19 1999夏 

156頁 ISBN4901095226(978-4-901095-22-8) 1999.7.1刊

vol.20 2000夏

128頁 ISBN4901095234(978-4-901095-23-5) 2000.7.1刊 

vol.21 2001夏

58頁 ISBN4901095242(978-4-901095-24-2) 2001.7.1刊

vol.22 2002夏

154頁 ISBN4901095250(978-4-901095-25-9) 2002.7.1刊

vol.23 2003夏

136頁 ISBN4901095269(978-4-901095-26-6) 2003.7.1刊

風絮 第16号

中国宋代に流行した歌辞文芸“詞”をめぐる考証と紹介

風絮ふうじょ

日本詞曲学会編  →「日本詞曲学会」ホームページへ

発行=日本詞曲学会  発売=あるむ

「風絮」とは春の終わりに柳が風にのせて飛ばす綿をまとった種、柳絮のこと。
 その小さな種にのせて詞の魅力を広く届けたいという願いがこめられている。

A5判/並製 本体価格2,000円(税込2,200円)

第16号

272頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-160-0 2019.12.20刊

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第15号

262頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-153-2 2018.12.20刊

別冊 龍楡生編選『唐宋名家詞選』北宋編(2)

692頁 ISBN978-4-86333-144-0 2018.3.31刊

第14号

286頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-137-2 2017.12.20刊

別冊 龍楡生編選『唐宋名家詞選』北宋編(1)

432頁 ISBN978-4-86333-123-5 2017.3.31刊

第13号

174頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-119-8 2016.12.20刊

別冊 龍楡生編選『唐宋名家詞選』唐五代編

456頁 ISBN978-4-86333-108-2 2016.3.31刊

第12号

338頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-104-4 2015.12.20刊

第11号

250頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-093-1 2014.12.20刊

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第10号 宋詞研究会編

234頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-084-9 2014.3.25刊

第9号 宋詞研究会編

296頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-066-5 2013.3.25刊

第8号 宋詞研究会編

242頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-056-6 2012.3.25刊

第7号 宋詞研究会編

262頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-041-2 2011.3.25刊

  • ネット書店でも購入できます
  • セブンネット
  • 第6号 宋詞研究会編

    424頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-030-6 2010.3.25刊

    第5号 宋詞研究会編

    366頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-014-6 2009.3.25刊

    第4号 宋詞研究会編

    224頁+カラー口絵2頁 ISBN978-4-86333-005-4 2008.3.25刊